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市場社会の思想史―「自由」をどう解釈するか
間宮 陽介
中央公論新社 刊
発売日 1999-03


内容(「BOOK」データベースより)
一七七六年、アダム・スミスは『国富論』を著し、「見えざる手」による市場社会の成立を理論化した。歴史学派・社会主義者はこの自由主義に異議を申し立てたが、経済学の科学化は「パレート最適」を生み、自由主義経済理論は完成したかにみえた。しかし大戦と恐慌は各国産業を弱体化し、自由放任を補完する形での政府介入を説くケインズ理論が世界を席捲するものの、その反動が七〇年代現れる。「自由」への対応を通して経済思想史を展望。

問題史の経済思想史とはなんだろうか? 2005-07-19
私がとある公立大学の学部演習のテキストとして選んだのが本書である。「人物」を中心に組み立てる通常の経済学史のテキストとは異なり、「社会主義」、「功利主義」、「貨幣」、「市場と計画」といった経済学における重要な「主題」(テーマ)を時代ごとに扱っている。あとがきによれば、「本書がめざしたのは・・・いわば問題史としての経済思想史である」。この「あとがき」には著者の思想に対するスタンスが明快に語られており、大変参考になった。偉大な思想家が「問いかけた問題の大きさと切実さが、彼らの思想を多産的な思想としている」のであり、「本書で取り上げた思想家たちは多かれ少なかれ市場社会の変化が生み出した問題と対決し、時代との対決のなかから自らの思想と練り上げている」とある。単なる机上の空論ではない生きた思想の歴史が綴られているのだ。もともとは放送大学での45分講義をもとにしているために、内容にやや物足りなさを感じることは否めない。スミスの箇所で扱われた「体系の人」批判をハイエクが現代的に再生した議論やスラッファによるリカードの客観価値論の復権など、現代とのつながりをより強く意識した構成もありえたであろう。それができなくともせめてシュンペーターの思想と理論には言及すべきではなかったろうか。とはいえ、本書はそれ自体として十分に魅力的な思想史を構成しているように思われる。第10章の「ケインズ革命」に連なる、「不確実性と期待」(第11章)と「貨幣について」(第12章)、そして「経済学における自由の思想」(第15章)はとくに印象深い。ケインズ理論に込められた思想・哲学を的確に描き出しているからだ。理論、思想あるいは哲学との豊かな協奏曲が奏でられているといえば大袈裟か。「市場社会の思想史」という本書のタイトルからも、経済学とは本来は「社会」と密接不可分な関係にあることを想起させられる。お薦めの一書である。

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コーヒー、カカオ、米、綿花、コショウの暗黒物語―生産者を死に追いやるグローバル経済
ジャン=ピエール ボリス
作品社 刊
発売日 2005-10


内容(「BOOK」データベースより)
本書は、現在のグローバル経済によって“一次産品”の生産が危機に陥っており、途上国の生産者が極度の貧困に追い込まれている実態を、7年間にわたる現地調査・取材をもとに初めて徹底暴露し、ヨーロッパで大論争を巻き起こしている衝撃の書です。コーヒー・ココアなどの品目ごとに、世界銀行・IMFが推進する経済自由化・構造調整の影響、あくどい多国籍企業の手口、国際投機ファンドによる相場変動の助長、原産国の政府・関係機関の腐敗・汚職など、グローバル経済の裏側で“一次産品”をめぐって何が起こっているか、そして苦悩する生産者の姿が生々しく描かれています。


コーヒーがさらに苦くなる。 2006-05-07
ブラジルがコーヒー輸出の利益を独占するため、大規模栽培で安値攻勢をかけて、中米諸国のコーヒー輸出国の経済に大打撃を与えた。さらに、ベトナムでは共産党幹部とヨーロッパ資本が結託して、農民にノルマを課してコーヒーの大増産と輸出を始めた。中米だけでなく、アフリカ諸国のコーヒー栽培農家が、経済的に自立が不可能になっていった。

アメリカ合衆国の主張する自由主義経済は少数者に富を与え、多数の者をより貧困に陥れた。

米の輸出市場は小さいが、零細貿易商人が政府・公務員との不正な結びつきで、大きな利益をあげた。コショウも市場が小さいので、不正な取引によって、大きな利益をあげるのが容易である。

日常、とても想像できない手段で、大きな利益をあげるために、世界中を暗躍している人々がいる、ということが具体的に書かれている。


大前研一「新・資本論」―見えない経済大陸へ挑む
大前 研一
東洋経済新報社 刊
発売日 2001-10


本書は、アメリカとイギリスでベストセラーとなった『The Invisible Continent』の邦訳である。著者は、イギリスのエコノミスト誌で5人の「現代社会のグル」に選ばれた大前研一。『企業参謀』をはじめ、数々の名著を生みだしてきた著者だが、その鋭い分析と時代を見抜く目は、本書でも健在である。
本書で言う「Invisible Continent(見えない大陸)」とは、現在大変革が繰り広げられている、ボーダレスで実体のないビジネスの舞台である。かつてイギリス人にとっての新天地、アメリカがそうであったように、新大陸は移住者に大いなる変革とチャンスをもたらす。現に、21世紀の「新天地」でも、すでにマイクロソフトやシスコ、AOLといった移住者たちが大成功を収めている。本書の意義は、その性格を明らかにし、そこで成功を収めるための戦略とヒントを示している点にある。
まず第1章では、「Invisible Continent」を4つの構成要素に分けて説明している。それは、「実体経済の空間」「ボーダレス経済の空間」「サイバー経済の空間」「マルチプル経済の空間」の4つであり、互いに影響しあっているこれらの空間をうまく活用することが、新大陸における成功のカギを握っている。第2章、第3章では、この新大陸で富が生まれるしくみを解説。「プラットフォーム」と「アービトラージ」の意味を正しく理解し、活用することによって、チャンスをつかんだり、リスクを回避したりすることが可能になる、という点に注目したい。第4章では、「目覚めよ 企業参謀」と称して、この新大陸で成功するための戦略のヒントを提示。第5章〜第7章では、国家や世界経済の問題を国ごとに解説している。そして、第8章では、国家や企業、個人がとるべき対策を提案し、教育問題にまで言及している。
ネットバブル期に書かれた本であり、情報は若干古いものの、その分析と洞察には目を見張るものがある。とりわけ本書で述べられる新大陸のルールを理解しておくことは、企業にとっても個人にとってもきわめて重要であるといえるだろう。(土井英司)

見えない経済大陸 2006-10-05
本書により改めて著者が高い見識を有している慧眼であると感じ入った

本書は確かに久々の骨太な著作である



”見えない経済大陸”

「ボーダレス経済」 「サイバー経済」 「マルチプル経済」



たしかにこれまでの「実体経済」に加え、現在ではこれら3つの経済空間が勢力を増し、急速に拡大を続けているといえる



著者も看破しているように日本は他国(とくに欧米諸国)に比べ完全に遅れていると言わざるを得ないが、それでも昨今ではほとんど全ての人がこれら3つの経済空間の広がりを実感として持つことができるところまで進んでいるといえるだろう



本書は著者も述べているようにこれら3つの経済空間を生き抜くためのマニュアル本ではないが、原理原則を知る上で多くの人に有益な書であるように感じる

その意味で一読の価値があることは言うまでも無く、より多くの方に熟読を薦めたい!!



ちなみに3つの経済空間への対処として稀有なる手腕を発揮した経営者としてジャック・ウェルチ氏が紹介されているが、その点において氏の著作にも触れ、氏の経営理念を知ることは大いに価値あることと私は考えている

余計なお世話で多くの人は読まれているだろうが、まだの方は是非一読を!


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