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モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質
青木 昌彦 /安藤 晴彦 東洋経済新報社 刊 発売日 2002-02 社会のシステムとそれを裏づける理論には、ときにパラダイム的変化が起こる。1980〜90年代には、市場化の理論とその方向の社会システムの変化が起こった。それ以前にはむしろ市場原理で見逃されていた人間的要因を重視する日本的経営の原理が評価されていたが、市場化の原理が新たなシステム原理として登場し、そして今、モジュール化という新しい組織の理論が脚光を浴びはじめた。分業は作業を分割化し専門化することによって組織の効率を上げる方法であり、複雑な工程を単純化し効率化する方法としてアダム・スミスも重視したことで知られているが、IT化・デジタル化の発展によってモジュール化と呼ばれる一種の分業が、コンピュータ産業、自動車産業、電信・電力産業などで組織革命を生みつつある。本書は、この新しい組織のモジュール化理論の提唱者であるK・Y・ボールドウィンの論文と日本の先駆者である編者たちの論文を含むモジュール化の理論と実例を示す格好の書である。 モジュール化とは、単なる分業ではない。全体として統一的に機能する包括的デザイン・ルールのもとで、より小さなサブシステムに作業を分業化・カプセル化・専門化することによって、複雑な製品や業務プロセスの構築を可能にする組織方法である。このことにより、複雑性が管理可能なものとなり、相互に調整しない並行作業が可能になり、下位システムの不確実性の問題に対処できる、という。今日のような急激な技術革新の時代には、新しい技術革新が事業成功の鍵を握るが、技術革新は不確実性が大きく、ひとつの技術にかけるよりも複数のモジュールに技術開発を競わせるほうが成功の確率が高い。 モジュール化の理論と実例を示す本書を読むと、「人間による情報の共有化」「垂直的統合」「匠の技術」を過信し、護送船団的にリスクを分散させてきた日本的経営がデジタル化・モジュール化時代に経済的優位を失った理由のひとつも理解できる。(丸尾直美) 重要!!モジュールという考え方!!! 2005-01-04 今日の市場環境の急激な変化は、流通過程・生産過程に何を求めているのか。その率直な答えの一つは、モジュール化経営の展開、という点に求められる。本書は、モジュール化という考え方について、主に生産過程で生じている現実と理論の紹介をしてくれる。 本書によれば、モジュールとは、半自律的なサブシステムであって、ほかの同様なサブシステムと一定のルールに基づいて互いに連結することにより、より複雑なシステムまたはプロセスを構成するものである。ここで、一つの複雑なシステムまたはプロセスを、一定の連結ルールに基づいて独立に設計されうる半自律的なサブシステムに分割することをモジュール化、ある連結ルールの下で独立に設計されうるモジュールを統合して、複雑なシステムまたはプロセスを構成することをモジュラリティという。 モジュールの考え方は、その基礎に、最終製品の複雑化・製品技術の複雑化に伴いモジュールの概念を導入することで、こうした複雑性を処理する方法論として位置づけることができ、その特徴・便益として大きく3つが指摘されている。?モジュール構造にすると、複雑性が管理可能なものになる、?モジュール化によって並行作業が調整可能となり、モジュール間の相互調整をせずとも同時に行うことができる、?モジュール構造は下位システムの不確実性に強い、これらである。こうした基礎的便益は生産面、設計面、使用面で現れるとされ、具体的には次のような効果があるとされる。例えば、生産面でのモジュール化は柔軟な生産システムが可能となり生産を弾力的に行うことができるようになる、設計面でのモジュール化は製品の多様性をほぼコストをかけずに拡大することができるようになる、使用面でのモジュール化は消費者において構成要素を組み合わせて自分たちの好みやニーズに合う最終製品を手にすることが可能になる、などである。詳細は、本書を参照されたい。 本書は、このようにモジュールという概念を詳細に議論し理解を深めてくれる。その内容は、競争が激しい市場環境において避けることのできない概念であるといっても過言ではない。そうした重要な概念が明らかになりつつある中、次なる課題は、こうしたモジュール化が進むことによって企業を成立させている機能(ex;マーケティング・開発・生産など)はどのように変化するのか、という点であろう。しかし、この点については、稀薄である。 PR |
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