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統計数字を疑う なぜ実感とズレるのか?
門倉 貴史
光文社 刊
発売日 2006-10-17



とてもためになる本 2007-02-25


 本書は、統計や経済の分析において正しい見方をするための視点を、数多く提供している。



(1)通説を疑う視点

 たとえば、「割れ窓理論による対策によって犯罪が減少した」「検挙率が低下しているのは日本の治安が低下している証拠」「日本のデフレは中国からの安価な製品輸入が原因」などの通説が正しいかを検証している。また、最近、はやりの経済波及効果がどの程度の有効性をもっているかをしっかりと解説している。

 通説を鵜呑みにしてはいけないことに改めて気付かされるとともに、その検証手法がとても参考になる。



(2)統計の解説が簡潔・ていねい

 GDP、消費者物価、DI・CIなど経済分析によく使う統計について、データをみる際に注意すべき点が、豊富な実例をまじえて書かれている。「消費者物価指数は上振れする傾向がある」「毎月勤労統計はサンプル入替時のぶれに気をつける必要がある」のように統計のクセが指摘されており、経済分析の際の参考になる。また、説明にあたって、各統計の作成方法を簡潔にわかりやすく説明している。



(3)分析手法をかいまみることができる

 平均値のようによくとりあげられるテーマも記述されているが、その他にも、因果性テストやダミー変数を使ったテスト、調査対象の違う類似統計との比較などの分析手法を、かいまみることができる。もちろん、個々の分析手法の詳細が記述されているわけではなく、読者が実際に分析手法を会得するためには他の専門書をみる必要があるが、「どんなときにどの手法を使うか」というアウトラインは知ることができる。



 以上のとおり、本書はさまざまな観点から有益で興味深い本。経済分析や統計分析をする人にとっては一読の価値があると思う。

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